株式会社ジュール研究所


第1章 地球カレンダー ・・・ 第2章 低炭素社会を目指そう! ・・・ 第3章 循環型社会を目指そう! ・・・ 第4章 自然共生社会を目指そう! ・・・ 第5章 持続可能な社会を目指そう!
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第5章 持続可能な社会をめざそう!

1.環境と経済の統合


環境と経済の統合とは 我が国においては、長い間、環境と経済はトレードオフの関係にあると考えられてきました。すなわち、経済性を優先すれば環境面にマイナスとなることは避けられないし、逆に環境配慮を優先すれば経済的にはマイナスになると考えられてきました。このように環境と経済を別個のものとして対立的に捉えると両者はトレードオフの関係になります。

しかしながら、深刻な公害を経験し、それを克服してきた我が国は、環境と経済を切り離して別個の領域として捉えるのではなく、両者を一体のものとして捉え、統合的に取り扱うことが適切であるという方向に進んできました。エコロジーとエコノミーの統合の時代が来ているのです。

特に、近年、日本経済をとりまく環境は大きく変化しており、1990年代初頭に比べて日本の産業競争力は大幅に低下し、産業の空洞化、地域経済の地盤低下等の深刻な状況をもたらしています。またアジア諸国からの安価な輸入品が入ってくる上に新たな需要を創出する力も低下しています。個人消費や設備投資などの不振による需要面からの要因も含めて、日本経済は今後も厳しい状況が続くと思われます。

しかしながら、今世界は、「2050年までに世界全体で温室効果ガスを半減」という目標に向けて動き出しています。CO2を排出しない「低炭素社会」へと経済・社会システムを転換し、その中で世界の産業が競争していく時代になっていくというのが大きな流れです。従って、これからは世界のどんな産業分野もCO2削減への配慮をしなければならない「環境制約」がかかってきます。

我が国には、世界最先端の環境エネルギー技術や、環境保全に携わる豊富な人材が既にあります。環境分野で国際的な優位を保ち、「低炭素社会」への転換をリードする存在になれば、環境が経済の足を引っ張るどころか、環境が日本の産業の国際競争力を高めていく時代になります。環境は新たなビジネスチャンスであり、成長力強化のカギとなるのです。

我が国のエコビジネスは、2000年(平成12年)の29兆9千億円が、2010年(平成22年)には47兆2千億円、2020年(平成32年)には58兆4千億円規模になるという試算があります。

我が国の環境ビジネスの市場規模及び雇用規模の現状と将来予測についての推計
環境ビジネス 市場規模(億円) 雇用規模(人)

平成12年

平成22年 平成32年

平成12年

平成22年 平成32年
環境汚染防止 95,936 179,432 237,064 296,570 460,479 522,201
環境負荷低減
技術及び製品
1,742 4,530 6,085 3,108 10,821 13,340
資源有効利用 201,765 288,304 340,613 468,917 648,043 700,898
299,444 472,266 583,762 768,595 1,119,343 1,236,439

例えば、我が国の家電製品は、非常に省エネが進んでいます。加えて、我が国では製鉄や発電などのエネルギー効率も非常に優れています。こうした省エネ技術は、世界でもトップレベルです。
省エネ技術のほかに、太陽光発電など再生可能エネルギーへのシフトや、石炭火力発電所に二酸化炭素を回収する装置を付けてパイプラインで海底に埋める技術(CCS)も進んでいます。世界の石炭火力発電所にCCSを付ける時代が来れば、我が国の技術が世界へどんどん輸出されるかもしれません。
また、低公害車の開発では、現在我が国は世界で非常に優位に立っていますが、次世代自動車の開発でも競争に勝たなければなりません。環境制約を乗り越える技術を早く開発し、価格面でも優位に立ち、我が国が世界をリードする基盤をつくる必要があります。

これからの日本は、環境と経済の統合された環境技術立国をめざすことによって明るい未来を拓くことが出来るのだと言えます。
環境と経済の統合された社会の実現は、次に述べる持続可能な社会を構築する大前提になると考えます。



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